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月下の一隅[若月まり子の資料室]
[第4夜]
フラワー・フェアリー
The Complete Book of FLOWER FAIRIES
シシリー・メアリー・バーカー 著
FREDERICK WARNE刊 A4変型判

 ちょっと大人っぽい白い小箱に入ったチョコレートとともにすべり出てくる、とってもファンタスティックな花の妖精のカード……開けるたびに違う妖精に出会える喜びと驚きにわくわくしながら高校生のささやかなお小遣いを妖精カードにつぎ込み続け、友達からはすっかりチョコレート狂いと思われていました。
 森永ハイクラウン・チョコレートの中に入っていたシシリー・メアリー・バーカーのフラワー・フェアリー・シリーズは、それまで私の中にまだぼんやりとした印象として抱いていた妖精の姿を、突然、具体的に華やかに次々と花が開くように見せてくれたのです。
 そうか、それぞれの花たちはそれぞれの花の形の色のドレスをまとったこんな姿で現れて、ドレスにぴったりのこんな蝶の羽根があるのか……と新鮮に感じたり、そう言われてみれば本当に思ったとおりだ……と納得したり……でもそう感じることを彼女の絵がいかに普遍性をもっているかということの表れではないでしょうか。その証拠に現在に至るまで、もうほぼ1世紀近くもの間、世界中の人々に愛され続けているのですから。
 大人になってから丸善の洋書フェアで初めて絵本になったものを見つけた時のうれしさは大変なものでした。その時は、小さなギフトブックしかなかったのですが、後にどっさり絵の入ったこの本「The Complet Book of FLOWER FAIRIES」を手に入れることができました。
 他の画家もそうですが描いた絵の多さにも圧倒されます。シシリー・メアリー・バーカーの絵の上手さは、やはりこれだけの作品を描き続けたことの成果であると思いますが、それも花に向き合った時に自然と花からのメッセージを受け取って表現せずにはいられない何かの力につき動かされてのことでしょう。
 彼女は一枚の絵に必ずといっていいほど小さな詩を書き添えます。それもまた絵では伝えきれないものを伝えようとする思い入れの表れのようです。私もその気持ちはよくわかり、自分の拙いイラストにもちょっとした言葉を書き添えています。
 シシリー・メアリー・バーカーから受けた影響とそれによってあたためていたイメージは人形制作の場を得て実現していくことができました。私にとって第1回目となったエコール・ド・シモン展の出品作「白いマーガレットのベビー」がはじめての妖精人形となりました。妖精人形エルフィン・フローリー・シリーズではグランヴィルをはじめ19世紀の妖精画家、そしてシシリー・メアリー・バーカーに触発されて、花に向かい合ってはその趣や語る言葉を聞いてかたちにしていくことができました。エルフィン・フローリーは自分の中でとても焦点が定まっていたせいか自然に短時間でやり遂げることができたので今までにかなりの種類を作ることができました。
 イギリスの香水がとても素朴でナチュラルな香りを放つが故に、洗練されたフランスの香水とはまたひと味違う魅力をもつように、シシリー・メアリー・バーカーのイラストは自然の姿をそのままに描き、自然の中に妖精がいることがあたりまえの、妖精がいないなんていうことがありえないような、誰の心も楽しくさせる、夢にあふれた世界なのです。

[若月まり子 2006/11/04]

(注)シシリー・メアリー・バーカーの花の妖精画を集大成した完本「The Complete Boook of the FLOWER FAIRIES」はイギリスの出版社FREDERICK WARNE社より1997年に刊行されました。現在でも洋書を扱っている書店で入手することができます。

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